橋本まほろさんの「のびのびがいい」のはなし(3/5)- 社会活動に傾倒、店にいなかった…?

2018.11.09コラム

5月から毎月最終火曜日にオノベカにて開催している「働く女」。
昔は結婚して家事をし、子どもを育てることが女性の生きる道だとされていましたが、今では女性の生き方も多様化しています。
そんな女性のキャリアについて実際に諸先輩方にお話を聴きたい!と思い始めた会です。
ゲストはテレフォンショッキング形式で決まります。
今回は、第3回目のゲスト・橋本まほろさんのおはなし全5回中の3回目です。

第1回目 30周年を迎えるオーガニック・自然食品店「らる畑」
第2回目 思春期の流行「ノストラダムス」
今回は学生時代ののち、30代のお話です。

突然社会活動にはまる

30代に入って、突然社会活動にはまります。きっかけは『六ケ所村ラプソディー』という映画です。
核燃料サイクルをテーマにしていて、青森県の六ケ所村にある再処理工場が舞台です。
日本の海岸を埋め尽くすようにある50数基の原発から出た核廃棄物を、六ケ所村でさらに再処理する工場が稼働するという寸前にできた映画だったんです。全然知らなかったのでびっくりしました。
原発はたいてい過疎地に作られるのですが、農家さんや漁師さんへの取材がきちんとされていて、土地を奪われるひとたちのメッセージを強く描いていたのが、その映画の印象的なところでした。
チェルノブイリの原発事故の時も、自分が小学校6年生くらいの時のできごとだったなのでなんとなく記憶があったんです。原発事故が起こった時の恐怖とか取り返しのつかなさとか。
そのことと、土地に根差している人々が、社会的には下に見られて、あしらわれ、土地を奪われる、尊厳をお金で買われることが未だに起きているということを知り、昔と今と全然状況が変わってないんだと愕然とします。
「これ広めなきゃ!」って思って映画の自主上映や勉強をしました。そうすると、次から次へと問題が結びついていきます。

↑イベント「核ってエコかしら」

2008年に洞爺湖へG8サミットが来た時には、グローバリゼーションはなんだか聞こえがいいけど先進国がやっていることはすごくえげつなくて問題が多い。そういう抗議で来るひとたちも札幌で受け入れようという活動がありました。
ヨーロッパから来るひとたちは、ベジタリアンやオーガニックに関心が高い人が多いので、八百屋として関わってくれという誘いを受けて、キャンプの活動に参加しました。豊かに見える大量消費社会の中、貧困格差は広がっているし、搾取される側とする側がいて、それをわたしたちの消費が後押ししているんだと知ってまた意識が変わりました。
その後は友だちが選挙に出ることになって選挙活動も手伝いました。
正直選挙運動は古臭くて、これガチでやるの大変だな~と思っていました。ただ今の選挙の仕組みに限界があって、訴えるのに車の上から言わなきゃいけないし、それ以外はハガキしかないとか。だけど本気でやらなきゃ受からないので、それを手伝って。心のなかで「うわあ…」って思うこともあったけど、その体験を通して、選挙の現実を知ることができました。
この時、こっちの活動ばっかりやってるんですよ。

全然店にいなかった

だから全然店にいなかった、わたし。いや、いたはずなんだけど気持ちがこっちにいっちゃってて結構迷惑かけてたような気がする…(笑)。今振り返るとスタッフも母も許してくれてたんだと思う。だけど、まずいなって思ってたんです。
自分の足元が揺らいでいるというか。こういう活動で大変なのは、次から次へとやることがどんどん増えていくこと。
問題は全部つながっているし、意識していた方がいいんだけど、わたしは活動の中心にいた訳ではなかったんです。
中心になった子をサポートしてたんですけど、その子がツーっていなくなっちゃったりして。
仕事もおろそかになって焦っていたという時に起こったのが2011年の東日本大震災でした。
たまたま「はんかく祭」という「反核」と北海道弁の「はんかくさい」をかけたイベントを直後に企画していて、入りきらないくらすごいひとが来たんです。その時、一緒にやっていた札幌の運動を引っ張ってくれた先輩方が、事故の後にも支援や保養活動にどんどん入っていきました。
わたしは今はらる畑として野菜の支援という形でしか関われていないんですけど、あの時は家で報道を見ていて、なまじ知識があったので、原発事故の進行は本当に怖かった。「ノストラダムス」とか言ってた若い頃の自分は甘かったと思いました。
破滅的なイメージとは違って、本当に起こるってこういうことなのかって。
まずお店どうしよう、スタッフは来させていいんだろうか、そもそも外に出ていいんだろうかと考えた。うちは北海道と九州のメーカーさんが多かったので、福島の農家さんと直に連絡取らなきゃっていうことはなかったんですけど、頭が真っ白になりました。真っ白になる中でもACのCMがずっと流れてる、こわかったですね。
福島原発の三号機がプルサーマル発電(※1)しているのも知ってたんですけど、報道で一回も言わなかったんです。
プルサーマルってプルトニウム(※2)だから絶対シャレにならんと思っていたんですけど、ずっと報道には出てこなくて、こういう風に隠されて、緊急時に何を自分たちは知らされないかということもつくづく思い知りました。

自分の責任

当時は今日みたいなこういう場があることが想像できないくらいの出来事でしたね。
徐々に日常に戻っていく中でもかさぶたみたいになってたかなと思います。
今でも収拾されたわけじゃないから、ずっと考えていかなきゃいけないことですけど。
この事故をきっかけにわたしの中で店、というか足元をちゃんとしないとスタッフやお客さんに対して責任があると思いはじめます。
店をどうしたいか、店の展望に意識を集中させるようになって。
うちの店のものって「はい、家で作って下さいね!」っていう素材だけの販売なんです。
素材だけというのは、ある意味今の時代にはそぐわないというか、大変な面もあるだろうから、それをすぐ食べられる状態で提供して「美味しかった」と思ってもらう、そういうアクションを起こしたいなと自分の頭の中に長くあったんです。
「食べさせたいな!」っていうのが。

※1 プルサーマル発電…原子炉でウラン燃料を使用した後の使用済燃料を再処理して取り出したプルトニウムと、ウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を使い発電する方法。
※2 プルトニウム…原子炉で使用しているウラン燃料にもプルトニウムが含まれるが、MOX燃料はプルトニウムの割合が増える。プルトニウムは核物質の中でも毒性強い。ウランと比べても核分裂しやすく、発がん性が強い。

足元を見直し始めたまほろさん。行動が変わっていきます。
次回をお楽しみに!