石田香織さんの「好きなように生きる!」はなし(2/5) -食ってなんだろう

2018.07.13コラム

5月から毎月最終火曜日にオノベカにて開催している「働く女」。女性の多様なキャリアについて実際にお話を聴く会です。

その第1回目のゲスト石田香織さんのが実際にお話しされたことの連載2回目です。

 

1回目 転機になった言葉

 

ちょっと「ダサかった」

もともと、ボランティア活動をずっとやっていたから、誰かに何かを伝えるとか、自分たちの思いを形にするというのが得意だったんです。得意だったんですけど、ちょっとダサかったんですよね。

興味のあるひとしか目に入らないチラシってわかります?例えば、置いてある場所が地下鉄の駅とか、市役所とか、公共の場にあるようなチラシ。そういうのってそもそも興味がないと手に取らないですよね。

それが自分の中でそんなに悪いことだとは思っていなかったんですけど、広告代理店の社長に

「それじゃ伝えたいことを広げていくのは難しいよ。そういうのに興味があるひとは手に取るかもしれないけど、伝えたいのは興味のないひとでしょ?だったらもっとお洒落じゃなきゃダメだし、かっこよくないといけない」

と言われて、確かにそうだと感じました。

マイ箸運動というのをやっていたんですよね。割り箸をちょっとでも削減して、自分でお箸を持ち歩こうっていう。それも市民活動みたいな感じで地味にやってたんですけど、その社長からのアイディアで、日本の伝統色256色パターンのすっごいカラフルな箸を作って、渋谷の109のモデルとのコラボをしたんです。

モデルってめちゃくちゃ発信力が高いので、109スタートで雑誌の付録に採用してもらったりして、「そっか~、デザイン性でこんなに違うんだ」と、そこの会社で学ばせてもらいました。

そうして、最初に独立したのは広告代理業でした。そのときは、それこそ自分たちと同じようにボランティア活動をしていたひとたちが、同じようにチラシやウェブサイトを作っているわけです。

興味のあるひとは見るんだけど、興味のないひとは見ないというのは市民活動の常なんですよ。なので、素敵な活動やすばらしいなと共感できるひとたちに、デザイン性を持ったホームページやチラシを格安で制作する会社を始めました。

格安だけだと自分が忙しくなって売上が全然ないということになってしまうので、そこは意識がある会社さんに正規の価格で仕事をさせて頂いて、バランスをとりながらの状態が3年くらい続きました。

自分の中で、広告の仕事ももちろんやっていきたいことではあるんだけど、もっと色んな人たちに関わってもらいたい、環境のことも知ってもらいたいという思いがありました。

じゃあどういうものなら環境によくて、みんなが楽しくて、取り組みやすいことかな?と考えたときに、誰でも毎日絶対食事をするし、その「食べ物」が環境にいいもの、社会的にも公正なものに変わったら世の中がもっともっと変わっていくんじゃないかなと思って、飲食店をやろうと決意したのが24歳のときです。

 

6千万t輸入、2千万t廃棄の日本

わたしがなんでこんなにオーガニックにこだわっているのか、ということをちょっと説明してもいいですか?環境とオーガニックがつながらない人が多いんですよね。

オーガニックって健康にいいんでしょ?と言われたり、最近モデルさんとかも美容のため、健康のために取り入れることが増えています。少なくとも、わたしがお店を創業した8年前は、街中でオーガニック野菜は全然買えなかったんです。

こだわり系のお店に行ってようやく買えるような状況だったんですけど、今はイオンやラッキーなどのスーパーで有機野菜をどんどん買えるようになってきました。

今、日本がどれだけ食材を輸入して、食材を廃棄しているのか知ってますか?一応データでは6千万t輸入して2千万t捨てているという現実があります。尋常じゃない量を海外から輸入して、捨てている

前に一時期CMで流行ったように、3秒に1人、アフリカの子どもたちが食べ物がなくて死んでいるんですよね。それくらい、食べもの自体が手に渡らずに命を失っているひとがいるにも関わらず、日本人はなんなんだ!!という若干の怒りが10代の頃はあったんです。食べ残しやがって~!みたいな。

しかも、その食べ物を輸入するためにエネルギーコストをかけるわけです。飛行機で来るということは、それだけCO2も排出しているし、化石燃料も使っている。それだけエネルギーコストをかけていて、売り場に並ぶ時にも腐らないように防カビ剤・防腐剤、色んな薬品が使われているわけですよね。

そうやってやっと並んだものも、賞味期限が切れたり色んな理由があって捨てられているというのは、どう考えても人間がやることじゃないと思って、「できるかぎり地域でとれた野菜を食べよう」と思える消費者が増えたら、わざわざ化石燃料を使って輸入する必要性がなくなるんじゃないかなとか、一番最初の考えはそこからです。

 

農家が食べる野菜≠わたしたちが食べる野菜

自分たちで北海道の農家さんをまわる農業体験や、北海道産の野菜を自分たちで食べようという地産地消キャンペーンのようなことをしていたこともあるんです。

 

 

びっくりした事実だったんですけど、農家さんを数件訪問すると、農家さんが販売する野菜と消費者である自分たちが食べる野菜とは、栽培方法が違ったんです。どうやら農家あるあるなんですけど、売る野菜は形が揃っていてきれいな方がいいので、農薬や化学肥料を使ってサイズを合わせたり、虫が来ないようにするんです。

でも、農家さんが実際その野菜を食べているかというとそうではなくて、不揃いの野菜、土付き虫付き当たり前という農薬も化学肥料も使わない野菜なんです。なんでですかって聞いたら「だって農薬って飲んだら死ぬんだよ?」って農家さんが平気で言うんです。

「そんな農薬使った野菜毎日食べてられるかよ」というノリで、自分たちの食べる野菜と出荷する野菜とを変えて栽培しているのを知って、「そんなの知らないしありえない」とわたしは思ったんです。

「なんで農薬を使わない野菜を販売しないんですか?」と聞いたら、「形が揃ってないきゅうりはやっぱり売れないんだよね、虫がついているキャベツや葉物はB品扱いされてしまうし、スーパーには絶対出荷できない」と。でも農家さんも、本当は農薬も化学肥料も使いたくないんですよね。

それでも作らざるを得ないのは、消費者が選ばないからだと気付いて、だったらオーガニック野菜や農薬・化学肥料を使わない野菜を積極的に選ぶひとが増えたら、農家さんの現状が変わってくるんじゃないかなと思ってオーガニック野菜をずっと言っているんです。

農薬・化学肥料って実際どういうふうに身体に悪いの?と聞かれたりするんですけど、「身体に悪いのは何とかっていう農薬なんですよね」ということではなくて、全体的に生物の多様性を失わせるというのが農薬の影響だなとわたしは考えています。

防虫剤を巻いて虫がいない農園はたくさんあるんです。ただ、そこは虫もいなければ、ミミズも鳥も来ない。トマトだったらトマトしか植わってないんです。土の中に本来いるべきである微生物たちも極端に数が少なく、山の土のふかふか具合とは全然違う、肥料をあげたり、畑を耕さないと土がどんどん固く痩せていってしまうというのも現状としてあります。

しかもその土の中に化学肥料や農薬を入れたときに、雨で流れていくじゃないですか。その流れた雨は川に行くんです。川に行って、その先に海に行って、また雨になって、降って…結局自分たちに帰ってくるんです。

農薬・化学肥料をたくさん使っているところの川には魚がいないということも考えると、やっぱり使わない野菜がもっともっと増えたらいいというのがあって、消費量を増やしたいということと有機農業や持続可能な農業を推し進めるために、飲食店・居酒屋をやろう!とスタートしたのが2010年でした。

 

 

続く…