山西言枝さんの「ずっとなりたかった職業じゃなくても」のはなし(2/5)- かなしいクリスマス

2018.12.22コラム

5月から毎月最終火曜日にオノベカにて開催している「働く女」。
昔は結婚して家事をし、子どもを育てることが女性の生きる道だとされていましたが、今では女性の生き方も多様化しています。
そんな女性のキャリアについて実際に諸先輩方にお話を聴きたい!と思い始めた会です。
ゲストはテレフォンショッキング形式で決まります。
前回に引き続き、第4回目のゲストで管理栄養士の山西言枝さんのおはなし全5回の2回目です。

第1回目 何やってもだめなんだな
やさぐれてしまった言枝少女の行方は?

19歳、クリスマスの孤独

高校でもまたテニスをやるんです。中学校のときにテニス部部長だった子が、なぜか勝手にわたしを入部させてたんです。「テニスなんて二度とやるか」と思っていたのに、「硬式と軟式とじゃ違うかもしれないから」って。わたしはやさぐれてたから、「サッカー部のマネージャーにでもなって楽しい高校生活にしよう」と思っていたのに。でも硬式テニスの方が(軟式テニスより)しっくりきて、楽しかったですね。レギュラーにもなれなかったけど、毎日テニスばかりしてました。

 

高校卒業するころは保育士になりたかったんですけど、テニスばっかりしてて、勉強する気が全然なかったんです。「保育士になる学科なら受かるんじゃない?」って大学ばかり受けてたらことごとく落ちてしまって、だけど、短大や専門学校は受けてなかったんです。そこはわたしも変にとがっていて。結局最後は、短大の後期試験を受けていました。保育科のある大学って栄養科もあるんですよ。受験した短大にも食物栄養学科があって、保育科の面接に行ったときに「保育科がもしだめだとしても食物栄養学科だったらどうですか?」って言われて、食物栄養学科が定員割れだったんでしょうかね。高校卒業して働きたくないから、「興味あります!」って思ってもないことを言って。

 

全然栄養士になる気はなかったんです。保育科は文系で、栄養科は理系なんです。だけど結局食物栄養学科に入ることになって、周りの同級生を見ていても、「栄養士とか絶対無理…」と思うようになって、短大1年の冬から一般職で就職活動を始めてました。その頃は就職氷河期で、「短大でしかも栄養科なのに何で」って言われちゃったら、色々理由をつけようとがんばるんだけど、大人の前で全然うまく嘘をつけなくて、落ちましたね。

 

保育士とか栄養士とかの就職って基本的に2年生の秋以降しかないんです。本当に卒業するぎりぎりにしか求人がこなくて、そこに乗り遅れたんです(笑)。栄養士になる気もないまま、就職課のひとに「とりあえず受けてみたら?」って言われて、富良野の、しかもバスで行かなきゃいけないっていうくらいの過疎地を受けましたね。短大卒の栄養士となると札幌では全然求人がないんです。

 

19歳、短大2年生の冬のクリスマス!クリスマスに面接があったんですよ。朝一で面接だから前泊しなくちゃいけなくて、お金もないしすごい変な下宿みたいなところで、周りのひとがみんなぎゃーぎゃー騒いでる中、わたしはスミノフだけを持って「これだけ飲んだらもう寝よう」と思っていたら、栓抜きがないんですね。栓抜きないんですけど…とも言えなくて。

 

そんな孤独をクリスマスに味わってまでも、わざわざ受けに行った面接。誰も受けないから、行ったら受かるよと言われていたのに、面接会場にはそこが地元の同級生がいたんです。彼女にとっては地元だから、すでに上のひとたちとつながってるんですよね。うわあ、騙された!と思って、案の定わたしは落ちて、その子は受かったんですよね。クリスマスの日にスミノフも飲めず。

 

卒業しても就職先が全然なくて、どうしようと思っていたら3月20日くらいに就職課の方から「3か月だけがんばればなんとかなるから、3か月だけ行ってくる気持ちでここに行きなさい」って紹介されたところに3月25日に面接受けに行ったんですね。3月30日に内定が出て、31日に文字通り布団だけを持って、お父さんに車で送ってもらって、4月1日から働き始めました。

 

3か月だけと言われてたのは、いわくつきな施設だったからなんです。管理栄養士(※)になるための試験の受験資格を得るためには3年以上の実務経験が必要なんですけど、それは施設から「あなたは3年間以上がんばりましたね」って出される証明書が必要なんです。証明書を施設が出す・出さないで同学校の卒業生がもめた施設だったらしくて。そんなことも後日わかりました。

 

海沿いの国道から山を4キロ登ったスキー場の上にある施設で、本当に山に捨てられた感じでした。誰も知らないし、土地もわからなくて。3か月だけがんばろうと思ってたところに、結果として7年半いたんですけど。

 

※栄養士と管理栄養士の違いについて
栄養士は専門学校・短大・四大で単位を取得して卒業すれば自動的にとれる資格で、管理栄養士は国家試験を受けて合格しなければなりません。今は学校や病院には管理栄養士の配置義務があります。厨房作業は栄養士が採用されることはあるけど、配置義務はないんですよね。管理栄養士は何百床だったら何人と決まっています。(山西さんより)

 

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なりたいと思ってもいなかった栄養士になることになった言枝さん。いわくつきの施設での生活はいかに?

 

次回をお楽しみに!