おおまちかおりさんの「世界共通!食べること」のはなし(1/5)-スローフードは「美味しい・正しい・きれい」

2018.09.02コラム

5月から毎月最終火曜日にオノベカにて開催している「働く女」。女性の多様なキャリアについて実際にお話を聴く会です。

その第2回目のゲスト・おおまちかおりさんが実際にお話しされたことを5回に分けて連載いたします。

 

スローフードって何だろう?

こんばんは。おおまちかおりと言います。

ここ3,4年は国際協力の分野で、開発途上国から日本に知識や技術を学びに来る方達の研修を担当しています。前回の石田香織さんとは食の関係でつながっています。

わたしは十数年スローフードの活動をしているのですが、「スローフード」という言葉を聴いたことある方いらっしゃいますか?

 

ー(多数挙手)

 

おお、すごーい!!スローフードと聞いたときにどういうイメージがありますか?

 

ースローなイメージ。(笑)

 

言葉だけ独り歩きしちゃって、「ロハス」とか似たような言葉と混じってしまっているんだけど、「スローフード」はイタリアの人口3,000人もないような小さな村のおじさん達が、自分達の村で獲れたものを自分達の村で美味しく食べようというのが始まりです。

「地産地消」という言葉が日本にありますけど、まさにそういう感じです。札幌の都心部に住んじゃうと中々難しいけど、南区や手稲には農家がいるように、知ってるひとのものを美味しく食べたい。

フードマイレージ(注1)も関係なく自分の住むまちで作られたものを食べることは、自分のまちに住む生産者さんを買い支え、食べ支えることだし、みんなで共にまちを豊かに、さらには食の文化を子ども達に伝えていくことができると思います。

スローフードには、「美味しい・正しい・きれい」であるということが理念としてあります。

まず、無骨でもなんでももちろん美味しいものであること。

そして、土壌をはじめ自然環境にきれいであること。オーガニックや自然農法だけを推奨しているわけではありません。

今までは空気もきれいで風が通る北海道はそんなに暑くならず農薬や薬品も本州より少なくて済んだんだけど、ジメジメした蝦夷梅雨があったりすると、少しだけ農薬を使っちゃう農家さんもいます。だかれども、それをすべてNGとはしません。

農家さんのことを知っていたら「このひとが農薬を使うってことは、大変だったから使ったんだ」とわかるんですよ。そういうことも、食べながらコミュニケーションを取ろうという活動をしています。

北海道はすごく盛んで、スローフードの会員が300人くらいいて、日本で一番多いです。その半分以上が生産者です。

牛を飼っているひとに、お米、お野菜、チーズ、ワイン…と多くの生産者さん達と一緒に、もっと北海道の食のことを知ってもらおうということで、食のイベントの開催や、映画の上映会をライフワークとしてやっています。

2年に一度世界大会がイタリアであり、その合間にもアジア大会が韓国や中国であります。北海道のお米や日高昆布を「北海道チーム」で持って行ったり、日本の一汁一菜という食のワークショップを行っていきました。

 

 

国内のイベントでは学生さんたちも色々手伝ってくれるんですよ。

白石区の有機野菜の「アンの店」というところもスローフードの理念を共通しているお店で、日本全国のオーガニックのものや洗剤・化粧品、調味料をおいてあるんですけど、今の時期、お野菜はだいたい北海道のものが入っています。そこでも色々食のイベントを行っています。

(注1 フードマイレージ…食材が産地から消費される土地まで運ばれる間にかかる輸送に要する燃料・二酸化炭素の排出量をその距離と重量で数値化した指標。)

 

幼少期を過ごした幌延町

10代のときなんて楽しいことばかりでウハウハでしたね、勉強はそんなにしてないけど。親が転勤族で道東の釧路市や摩周湖に近い標茶町の町立病院で生まれました。

父親が標茶に赴任していて、そこに住んでいた母親と結婚しました。それから北見や中標津と道東への転勤が続いていたのですが、幸いにも小・中学生のときは転勤もなく幌延町にいました。

稚内市の下ですね。「幌延町」と聞いて『あれ?』と思う方います?

核廃棄物処理場を作る・作らないというので揉めに揉めて、今は研究所という施設が作られています。

周りは酪農地なんだけど、「核廃棄物処理場を作る」と町長が宣言してしまったんです。セイコーマートは「豊富町の牛乳が…」とかやってるじゃない?幌延町の隣が豊富町なんです。

雪印・四つ葉、色んな乳牛メーカーがあるところに核廃棄物処理場を作るなんて、幌延町の周りの町は全部反対しているし、わたしが小学校の中学年位のときには毎週全国規模のデモがあったんです。

当時は全国から片田舎の幌延町に集まって「原発はんたーい!」ってやってたんです。

毎週何千人ものデモがあったので、町のはずれに機動隊と自衛隊の臨時駐屯地が作られて、町々の道路の角地に自衛隊員が立っていました。田舎の町って夕方になると暗いんです、電柱もなくて。

部活の帰りとか、そんな道に自衛隊の方が立っていて、子ども心に「変だなあ」って思っていました。小・中学校も町役場も全部建て替わるんです。お金が国から落ちるから。

わたしは第二次ベビーブームに生まれて、全国で一番人数が多い世代ですけど、それでも幌延町は人口が少なくて、クラスメイトが多くても60人。60人いないことが多くて、本当は1クラスでもいい位だけど、無理やり2クラスにしてたの。

ほとんどが親戚縁者で、そういう町で「賛成・反対」に分かれたら、いとこ同士でも口きかなくなっちゃったりしてました、親が喧嘩するからね。

うちは雪印だったんだけど、雪印とNTTと国鉄(現在のJR)、この3つの会社のひとは次の選挙で投票するなという怪文書が回覧板で回ったりしたんですよ。

どうせ転勤族は2,3年でいなくなるだろう、ずっと町に住んでいるひと達が投票するべきだって。

北電はもちろん賛成派だから、北電の方の社宅には回らなかったんだけど、わたしたちの社宅には怪文書回ってましたね。

小学校は木造で、100mダッシュできるような長い廊下があり、かわいい校舎だったんです。それを簡単に壊して、鉄筋コンクリートの新しい校舎が建ち、1人1台パソコンがあたるような全国で2番目に立派なパソコンルームがあって、30年以上前ですよ?お金が落ちてるからね、研究事例ですって言って。

わたしは高校から札幌来ちゃいましたけど、7年前の3.11のときに、自分の小・中学生のときの経験を今伝えなきゃだめだなと思いました。

全国の原発が止まったでしょう?止まったけど暮らしは大丈夫だと。エネルギーも食もそうだけど、日本人は贅沢しすぎてる。

コンビニで何かちょっと物を買ってもすごくゴミが出ますよね。なんで蕎麦1つにこんなにたくさんラップやパッケージのゴミが出るんだろうって。しかも何時間かで廃棄するでしょう。

コンビニだけじゃなくてデパ地下もスーパーもそうですよね。自給率も低くて、ほとんど輸入食品で暮らしているわたし達が何でこんなにものを廃棄できるのかなと思って、そこを大事にしたいと思っています。

自分の住んでいるまちのものを食べようというのもそうだけど、できるだけ知った顔のひとが作ったもの、どうやってできているかわかるものを少しでも気にしながら暮らしていけたらいいなと思っています。

 

 

続きます!